都合のわるい女
「いってーな! この凶暴女!」


「人聞きの悪いこと言うからでしょ!」


「事実を述べただけだ!」



タカハシは不機嫌そうに眉を吊り上げた高慢な表情で、腕を組んで仁王立ちしている。



「あたしのどこが女王様だっていうわけ?」


「自分の胸に手を当ててみろ!
いや、今すぐに鏡を見ろ、鏡を!
お前、今まさに女王様だから!」


「はぁ? わっけわかんない。
いいから早くご飯作ってよ。
あたしお腹すいてんだってば」


「だから、そういうとこだよ!」



こいつを女王様と言わずして、誰を女王様と呼べばいいというのだ?


狭苦しいワンルームの、猫の額ほどの広さしかない台所に立ち、俺は深くため息を洩らした。




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