恋する淑女は、会議室で夢を見る

「青木さま
 お願い致します」

係の者もやってきて
壁際にあるグランドピアノを指し「あちらです どうぞ」と言う。


 ゴクリ

―― ピアノなんて弾けない…


習い事は逃げ回ってきた。

“一曲だけでもいいから弾けるようにしましょう 必ずやっていて良かったという日が来ますから“ 
ユキの小言が浮んだが、今 後悔したところではじまらない…。


促されるまま、

真優は、ゆっくりと

席を立った。




・・・



突然の指名に驚いたのは、真優だけではない。

「真優?
 あいつ…青木の娘だったのか」

真優の先輩、氷室仁も驚いた。


「らしいな」

「でも、どういう事だ?
 あいつが珠洲の友達とか、ありえないだろ
 それにあいつ多分、ピアノは弾けないぞ」

「え?
 うそだろ?」

「いや 本当だ
 前にそんなことを言ってたし」

LaLaを挟んで、仁と遥人の3人が怪訝そうに見つめる中
虚ろな瞳をした真優が、係に先導されながら歩いてくる。



「珠洲と何かあったのね… あの娘」

呆れたようにため息をついて、LaLaが立ち上がろうとすると
桐谷遥人が、それを止めた。

「?」

「大丈夫」
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