恋する淑女は、会議室で夢を見る
瀬波の席は秘書課の中に個室があるのだが、
その常務室と廊下の間にある秘書席に、珈琲をいれることも含め
様々な常務の雑用をこなすために
女性秘書を配属することになっている。
秘書課の女性達は生え抜きのエリートである。
容姿もさることながら、事務能力、語学力、コミュニケーション能力などなど
それぞれに若干の得手不得手はあるものの
総合的にみれば、大きな差はない。
「別にいいのに
ついて来なくても」
「いえ
私も試しに買ってみようかと」
誰にしたものか。
数人の候補がいるが
いまひとつ決め手に欠けていた。
「担当の女性秘書ですが…」
「まだ決まらないの?」
「…」
「うっとおしいのだけは、やめてね」
問題はこの遥人のいう”うっとおしい”で
「ちなみに――」
候補の中から2人の名前をあげてみたが
「いやだ」
と、にべもない返事が帰ってきた。
「2人ともうっとおしい」