恋する淑女は、会議室で夢を見る


瀬波にもわからないではなかった。



他の役員に、遥人ほど若い役員はいない。
せいぜい若くて40代
それも妻帯者である。


そこに彗星のごとく遥人が現れた。


遥人は、背も高く
顔もスタイルも整っていて、モデルもやらないかと誘われるほどに美男子である。

ましてや未来を約束された御曹司となれば
厳しく訓練されているとはいえ
若い女性が、浮かれるのは無理もないのかもしれないし
その気持ちがわからないでもない。

が、しかし
その感情は仕事をする上で、大きな弊害になる。



今朝も給湯室から聞こえた
”今日は私よ!”
”ずるい!”
遥人の珈琲を誰がいれるのか揉める声。


”君たちはもう結構
 佐々木くん 桐谷取締役に珈琲を”

すかさずベテラン秘書に言いつけて交代させたが
その事を思い出して
瀬波は微かに眉をひそめた。


とにかく
若い秘書たちの興奮は
遥人に伝わり、それが遥人を不愉快にさせている。



 ”うっとおしい”


ここはやはり
専務や他の役員の秘書をしているベテラン秘書から…

そう考えていると
休憩コーナーから声が聞こえてきた。


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