笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「陽泉も願い事書いたら?」
佐々木くんに言われて
"私の願い事ってなんだろう?"と考えてみた。
だけど、すぐに思い付くものはなくて、
「ありがとう。でも、私はいいや。佐々木くんが書いたら?」
と言ってみた。
佐々木くんも少し考えてから、
「…俺もいいや」
と言う。
それから私たちは、順番に他の飾りを見て回ることにした。
その間も、佐々木くんと私の手は繋いだまま。

すべての飾りを見て駅まで戻ってくる。
「じゃあ、帰るか」
佐々木くんが言い、
私は「うん」と頷く。
そして、歩き出す。

「久しぶりに、じっくり七夕飾りを見たよ。
今日はありがとね」
帰り道、私は言った。
「…そっか。
それなら良かったよ。
実は俺も、あんなゆっくり見たのは久しぶりなんだ。
でも、短冊に願い事なんて懐かしいな」
「うん。
私も幼稚園くらいのころは『お姫様になりたい』とか書いたかも」
「へぇ。女の子って、そんなもんなんだな」
「うん。佐々木くんは?」
「俺? 俺はバスケ始めてからは、『バスケ選手』。その前は、『ヒーローになりたい』、だった気がする…」
「そうなんだ。
小さい頃は、みんな同じなんだね」
「そうみたいだな」

そんな話をしているうちに、オフィスで借りている駐車場に到着。
もう佐々木くんと私の車しか残っていない。

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