笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
「あれっ、陽泉?」

そう呼ぶ声に振り向くと、高校時代の2つ上の先輩·井上愛美(イノウエ マナミ・22)さんがいた。
私が1年生で入部したとき、キャプテンだった先輩である。

「愛美先輩!
お久しぶりです!」
久しぶりの再会が嬉しくて、愛美先輩に抱き着いた。

「ホント久しぶりだね。まさか陽泉に会うと思わなかったよ」
「私もです」
「今日はファイターズの応援?」

"ファイターズ"とは、地元のプロチームのことである。

「はい。
…それと、弟が選抜に選ばれて、そっちを見に来ました」
「そうなんだ」
「はい。
…先輩は、ファイターズの応援ですか?」
「うん。
それと…婚約者が選抜チームのコーチをしているから…」

愛美先輩は頬を染めながら選抜のベンチに目線を移した。
私も先輩の目線を追ってベンチを見る。
…そこには、田村コーチの姿が。

愛美先輩が見ていることに気づいたのか、田村コーチがこちらを見上げた。そして、愛美先輩の姿を確認して微笑んだ…ように見えた。

「…先輩の婚約者って」
私の問いに、
「…そう。
田村和茂さんと、6月に式を挙げるの」
幸せいっぱいの笑顔で、先輩が頷いた。


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