残業しないで帰りたい!

「あっ!」

走り去る女の子の後ろ姿に伸ばした自分の手をじっと見つめる大塚。
自分の手を見つめても仕方がないと思うけど?

「追いかけないの?」

「……うるさいっ!アンタが言うな!お前ら、絶対に復讐してやるからな!おぼえてろっ」

グルグルと牙を剥く狂犬みたいに、大塚は俺たちを睨み付けて怒鳴った。

「そんなこと言う前に、早く追いかけた方がいいですよ」
「係長、さっさと行きなよー」
「早くしないと追い付かないよ!」
「応援してるよー」

人事課女子たちに口々に言われ、チッと舌打ちをしてもう一度俺たちを睨み付けると、大塚は急いで女の子を追いかけて行った。

その後、結局うまくいったらしい。
心配することなかったね?
良かったじゃない。

でもそれ以来、俺は悪趣味課長というレッテルを貼られてしまった。
まあ、別にいいけどさ。

だって、気になったんだもん。
誰か他の男が青山さんに手を出すんじゃないかって。

そんなに気になるなら、自分が行けばいいんだろうけど、それもできない。

……好きすぎて近付けないんだ。

かといって、他の女の子に手を出す気には全くなれない。
彼女を好きだと認識してから、もう誰も抱いていない。触りたくもない。

やっぱり、彼女にしか触りたくないんだ。
好きだから、触りたい。好きな人に触りたい。

でも、当然お付き合いするなりして同意を得ないと触ることはできない。……当たり前だね。

勝手に触ったりしたら、セクハラか犯罪になるわけで……。

お付き合いねえ……。
話しかけたことすらないんだよなあ。

青山さんは俺のこと、名前くらいは知ってるのかな?
一応俺、課長だし。
存在くらいは知ってるよね?

そのくらいは期待しても、いいよね?
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