残業しないで帰りたい!
うきうきとそんな野望を抱いたのも束の間、「ねえねえ、藤崎課長がいるよー」って声が聞こえて、わらわらと知らない女の子たちが数人集まってきた。
……あ、しまった。
これ、イヤなんだよな。
これが嫌だから今まで休憩室には来なかった。
外で食べてる時は比較的見つかりにくいんだけど、社内にいるとなぜかこういう感じで声をかけられてしまう。
「何食べてるんですかー?」
「ここで食べるなんて、珍しいですね」
「あっ、それ、新発売のお弁当ですよね?」
君ら、誰だっけ?
もしかして、君らアレ?販売促進課の子?
相変わらず派手だねえ。
俺には顔の区別はつかないけど。
邪魔しないでほしいんだよなあ。
そんなことをしている間に、青山さんたちは弁当を食べ終えて席から立ち上がってしまった。
えっ!もう行っちゃうの?
後ろ姿にハッとしても、何もできずに見送るだけ。
青山さん、行っちゃった……。
結局一度も目があわなかった。
一度もこっちを見てくれなかった。
気がついてもくれなかった。
……ショック、だな。
茫然自失。俺、案外自信あったんだな。
女の子なら俺を見てくれて当然って感覚があったのかもしれない。
それなのに……。
告白したわけでもないのにフラれた気分。なんか、初めての感覚だ。切なくて胸がキュウッと締め付けられる。
他の子は当たり前のように寄ってくるのに、なんで好きな女の子にはチラリとも見てもらえないんだろう。
やっぱりあんな若い子に振り向いてもらうなんて無理なのかな。
俺も年だもんな……。
振り向いてもらおうなんて、おこがましいのかもしれない。
彼女は俺なんかには手の届かない存在。
遠くから見つめるだけの存在。
いい大人がいったい何やってるんだろう……。