残業しないで帰りたい!

それにしても青山さん……。
近くで見ても本当に可愛い。
目の前で喋ってる姿、超可愛い。

顔には出さずにデレッとして、そして胸が苦しくなる。

こんな時間を知ってしまったら、遠くから見てるだけなんて、もうできないよ。

もっと君と話したい。
もっと君を見つめていたい。
できることなら……君に触れたい。

「青山さんだよね?よく残ってんの?」

よく知ってるくせに、そ知らぬ顔でそんなこと聞いてみたりして。

「いえ、今日は特別に遅くなってしまって」

うんうん、知ってる。
でも、最近大変でしょ?無理してない?

「本当に?ほら、北見さんが産休に入ったからさ、分担が増えて負担になったりしてるんじゃないの?」

「それは大丈夫です。今は見本市の準備もあるし、今日はたまたま頼まれたことがあっただけで、私の要領が悪いだけですから」

青山さん、謙虚だなあ。大変なら大変って、言っていいんだよ?

「ふーん……。まあ、大変だったら言ってよ。何か対策考えるから」

「……はあ」

あらら。青山さん、困った顔をしてる。

いきなりそんなことを言われても困るのかな?入社2年目の子には言いにくいのかもしれないね?

「あのね、そういう対策考えんのも俺の仕事だから。わかった?」

俺、君のためなら何だってするよ。
……なんてことを思う俺は、管理職失格なんだろうね。

「え……?えっと、はい。わかりました」

「よーし!わかったらさっさと帰ってくんないかなあ。君が帰んないと俺、帰れないんだよねえ」

「えっ?そうなんですか?」

本当はもっと話していたいけど、時間も遅いからね。
もう、帰ろう?

「すみませんでした。失礼しますっ」

青山さんは部屋の入り口で電気を消すと、頭を下げて俺の目の前を通り抜けて行った。
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