残業しないで帰りたい!

「わかる?」

俺の問いかけに青山さんはうなずいた。

「……良かった。ホントに良かった……」

心からほっとした。
でも、ほっとしたのも束の間、青山さんは俺が手を握っていることに気がついて驚いたのか、握った手を強く手を引いた。

嫌?
怖い?
でも、離さない。

「ダメだよ、動かしちゃ。切れてるんだ。今、白石さんが救急箱取りに行ってくれてるから」

本当のことではあるけれど、手を離したくなくて強引に正当化した。

……手を握られるなんて、怖いかな?

でも、俺の心配をよそに彼女は俺のワイシャツを気にし始めた。
血が付いたから気にしてるの?

「ごめんなさい、課長のワイシャツ……」
「そんなのいいんだ」

俺のシャツなんて全然気にしなくていい。
そんなの、どうだっていい。

そんなことより、本当に君のことが心配でたまらなかった。

だって、永遠に感じたんだ。
目が覚めない君を前に、不安で不安でたまらなかったんだ。

不安だった時間を思い出したら辛くなって、目を閉じてうつむいた。

「……良かった、目が覚めなかったらどうしようかと思った」

目を開けると、彼女がぽろっと涙をこぼしたから驚いてうろたえた。

なんでっ!?
どうしたの?
怖かったこと、思い出した?

……お願いだから、泣かないで。

反射的にそっと指で涙を拭った。

「大丈夫?」

「……はい」

咄嗟に頬に触ってしまってドキッとしたけど、彼女が怖がっている様子はない。

……怖がられなくて良かった。

咄嗟に触ってしまったとはいえ、彼女の頬の手触りは想像通りなめらかで、ソワッと指先が痺れた。
また触りたい、なんて思う俺は本当にバカだ。
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