残業しないで帰りたい!
「あの、課長さん……。そこにいると掃除できないんで、どいていただけませんか?」
沢口さんに言われて下を見ると、俺の足元の絨毯にも血が付いていた。
でも青山さんから離れたくない……。
「ここは後にして」
「ええー?……もうっ!仕方ないですね。後でどいてくださいよ」
「はいはい、後でね」
チッと舌打ちが聞こえた気がしたけれど、気にしない。
そんなことより、青山さん……まだ意識が戻らない。
握る手に力が入った。
お願いだから、目を覚ましてよ。
そういえば。
目が覚めた時、俺が手を握っていたら青山さん怖がるかな?
……。
本当に目が覚めるんだろうか。
「青山さん……」
不安になってもう一度声をかけた。
「青山さん、起きてよ……。青山さんっ」
心なしかさっきより頬に血の気が戻っている気がする。
瞼が少し動いたような……。
もしかしてっ!
気がついた!?
ハッとして必死に声をかけた。
「青山さん!青山さんっ!」
青山さんは小さく息をして細く瞼を開けると、眩しそうにまた目を閉じた。
「あっ!青山さんっ!」
閉じないでっ!目を開けてよ!
青山さんは俺の声に答えるように薄く目を開けた。茶色い瞳がわずかに揺れている。
ああ……気が付いた!
でもまだ虚ろ。
もっとちゃんと目を覚まして!
「気がついた?青山さんっ!わかる?」
「……かちょう?」
君の声!その声が聞きたかったんだ!
君の声が聞けて良かった……。