残業しないで帰りたい!
ちなみに俺は朝が苦手だ。
目覚まし時計を2つ用意してもなかなか起きられない。
それに対して香奈ちゃんは早起きだ。
朝、爽やかにパチッと起きられるなんて本当に羨ましい。
若いからか?いやいや、体質だと信じたい。
彼女が初めてうちに泊まった翌朝、同じベッドで同じ布団に包まり、俺の髪に触れてじっと見つめる彼女の茶色い瞳がすぐ目の前にあった時は、嬉しくて心から幸せで、思わず強く抱き締めた。
あれから香奈ちゃんが泊まりに来た翌朝は、台所の物音で目が覚めることが多い。
トン、トン、トン、トン……。
カーテンの隙間から漏れる朝の光と、寝ぼけた耳に聞こえてくる包丁がまな板に当たる音。
まさしく朝の台所の音!
嬉しくなってニヤッとして、枕に顔を埋める。
今日は何かな?和食かな?味噌汁?
人生って面白いなあ。
俺ってこんなことに幸せを感じるんだ。
知らなかった。
まあ、腹を満たすためだけに朝カップラーメンを流し込むように食べていた日々を考えたら、そりゃあ幸せだよね。
彼女と共に過ごす時間は本当に心から素直な自分でいられて、当たり前のようにのんびりできて、何をしていても幸せだ。
彼女は全然俺の思い通りには動かない。
でも、思い通りに動かないからこそ、予想通りに動かないからこそ、たまらなく愛おしい存在なんだと改めて理解した。
彼女を思い通りにしたい、なんて思っていたのは心に余裕がなかったからなんだろうか。
……いや。
自分に自信がなかったからかもしれない。
彼女を思い通りにして、支配下に置いておかないと不安だった。
そんな自信のない情けない俺を彼女は変わらず好きでいてくれている。
だから、俺は自分に自信が持てるようになったんだ。
今は思い通りにする必要なんてない。
彼女が自由に気ままに予想外に動く姿が可愛くて、いつも俺は目を細めて愛でるように彼女を眺めている。