残業しないで帰りたい!

彼女を抱き締めて眠る週末は至上の幸せ。

だけど……。

本当は、それだけじゃ不満だった。

本当は彼女を抱きたかった。

初めて彼女を家に連れて帰った時だって、格好つけて「抱かない」なんて言ったけど、本当は抱きたくてしかたがなかった。

でも、抱けなかった。

1か月も彼女に手を出せないなんて……。

昔のズルい俺とは違う。
強烈に彼女を求めている自分を感じている。
それでも、一歩が踏み出せなかった。

彼女が俺を怖がらないのはわかっていたけど、事と次第によっては他の男と同じように俺のことも怖くなってしまうかもしれない。

彼女に怖い思いなんかさせたくないし、何より彼女に怖がられるなんて、そんなの俺が耐えられない。

それに香奈ちゃん、初めてなんでしょ?
……絶対に痛いよね?

大昔、抱いた女の子の中には初めての子も何人かいた。

新田みたいな男は「初めて」なんて聞くと俄然張り切って喜ぶんだろうけど、あの頃の俺は初めての女の子なんて、正直しんどかった。

俺だって初めてって聞いたらそれなりに気は遣ったけど、それでもみんな痛がるんだもん。

でも、初めてを俺としたいと思った子にとって、それは大切な瞬間だったのかもしれない。
あの頃の俺はそんなこと、考えもしなかった。

むしろ、あんまり痛がるから、なんか俺が悪いみたいで嫌だった。
だから、めんどくさかった。

もちろん今は違う。
彼女のことがめんどくさいわけがない。

抱くなら絶対、大切に丁寧に誠実に抱く。

痛くないように俺はきっとものすごく努力するだろう。それでも彼女があんな風に痛がるのかと思うと、やっぱり手が出せなかった。

なんていうか、自業自得だ。
今まで女の子を大事にしてこなかった報いなのかもしれない。
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