残業しないで帰りたい!

香奈ちゃんと一緒に暮らせたら、香奈ちゃんが毎朝起こしてくれたらどれほど幸せだろう。

でも、一緒に住むならやっぱりきちんとけじめをつけたい。惰性で一緒に住むのは無責任だと思う。

つまり、結婚したい。

香奈ちゃんと付き合うと決めた時、これから先の延長線上に俺は間違いなく結婚を意識していたと思う。

でも、結婚っていったい何だろう、と考え出すと立ち止まってしまう。

一緒にいられればそれでいいんじゃないの?
あえて結婚する必要性ってある?

何のために結婚するの?
そういう年齢だから?
男としての責任?
それとも束縛?

結婚したら何かが変わる?
家族になるってこと?
じゃあ家族って何?

結婚して子どもができて家族になっていく?
子どもなんて……全然想像できないな。

それに俺はまともな家族を知らない。そんな俺が正しい家族の形を成せるんだろうか?

いや……。
そういうことじゃないのかもしれない。
何が正しい、なんてなくて、俺たちには俺たちなりの家族の形があるのかもしれない。

どんな形?
……それはこれから二人で見つけていくしかないんだろうな。

香奈ちゃんはどう考えてるんだろう。
若い彼女は結婚なんて、まだ考えていないんじゃないだろうか。

それに付き合ってからまだそう長い期間が過ぎたわけでもないし。
もう少し様子を見る?

でも、いつまでもこのまま二の足を踏んでいるわけにもいかない。

もし本当に俺が東京に異動になったとしたら、その時は現実的な方向として考えよう。

新田がでかい声で自慢げに話す言葉を全く聞かずに受け流しながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
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