残業しないで帰りたい!
全体的に白くなった親父をチラリと見る。俺は歳をとるとこうなるんだろうか。
昔は親父に似ていることが嫌だった。
今は……良いのか悪いのか、よくわからない。
その後沈黙に耐えられず、ちょっとトイレ、と言って席を立ち上がった。
間取りがよくわからず、迷ってなんとかトイレにたどり着いた後、手を拭きながら廊下を歩いていたら、里美さんの声が聞こえてきた。
香奈ちゃんと一緒?
なに話してんの?
「翔太くんはオムライスが好きでしょう?」
「はい」
「実は昔ね、翔太くんのお母様からオムライスの作り方を教わったの。だから、香奈さんにも教えてあげるね」
……それって、どういうこと?
思わず立ち止まって耳を傾けた。
「えっと……あの、翔太くんのお母様って……?」
「翔太くんの本当のお母さん」
「会ったことがあるんですか?」
「うん、ずいぶん昔にね。それからずっと文通もしてたのよ?……フフッ、おかしいでしょ?前の奥さんと仲良くするなんて」
「い、いえ……」
いやいや、おかしいよ、そんなの。
仲良くなんてできるわけがないだろう?一人は妻の座を奪われ、一人は妻の座を奪ったんだ。
里美さん、いったいどんな気持ちで母親に会ったんだよ?
「私ね、すごく悪い女なの」
「え?い、いえっ、そんなこと……」
「だって私、翔太くんからお母さんを奪ってしまったんだもの」
「……」
そんなことを言われても香奈ちゃんが困るだけだろう?里美さん、何を言ってるんだよ!