残業しないで帰りたい!
「もちろん見たいよ」
「一万円!」
「はっ?金取んの!?」
「文句があるなら見せない」
「嘘です、わかりました、払います」
俺が財布を出そうとすると、瑞穂さんは「冗談だってばー!」と笑った。
瑞穂さんとの関係はだいぶ改善されたんじゃないだろうか。こんな風に話ができるなんて。
瑞穂さんはニヤリと笑うとバッグの中をゴソゴソと探り始めた。
そして、小さなアルバムを取り出すと、目の前でバンッと勢いよく開き、トントンッと指をさした。
「これ、小4の時の写真。……ほらっ!これが香奈!可愛いでしょー」
「ああ……うん、可愛い……」
少し古びた写真。そこには髪が長くてスカートをはいた香奈ちゃんが笑って立っていた。
君たち、子どもの頃から背が高かったんだね?頭ひとつ出てる。
それにしても香奈ちゃん、超絶可愛い……子役になれる!なんて思うのは、俺のひいき目だろうか。
「香奈はね、この頃からのんきなくせにすごく気を遣う子だったんだ。いつも遠慮がちでさ」
「……」
似たようなことを先日挨拶に行った香奈ちゃんの継母、優香さんにも言われた。
初めて会った優香さんは、想像通り気の強そうな女性だった。
「あの子はすぐ人に合わせるから、アンタにも合わせてるんじゃないの?」
優香さんは俺にそう言った。
そんな優香さんのツンケンしてイジワルな態度はすごく鼻についた。
それに、まだ幼かった香奈ちゃんが犯罪に遭った時、「女を意識して男を誘ったんだろ?」なんて言って傷つけたことがどうしても許せなくて、優香さんに対してかなりトゲトゲしく接してしまった。