残業しないで帰りたい!
優香さんと絶妙にバランスをとりながら接している香奈ちゃんは、気を遣い遠慮していることに自分では気がついていない。
そんな時、香奈ちゃんは自分の心の内を見ないようにしているんだろう。
だけど俺には心の内を見せてほしい。
そして、俺と一緒にいる時は自分自身を直視してほしい。怖いかもしれないけど、俺は必ず君のそばで支えるから。
君がどんな君であっても、俺は君を愛し続けると誓うから。
だから、何も怖がらないでそのままの自分でいられる家族になろう?
俺は優香さんに挨拶をした帰り、そう香奈ちゃんに言った。
香奈ちゃんはぽろぽろと涙を流した。
もう、我慢しなくていいんだよ。
俺には恩義も感じなくてもいいし、捨てられる恐怖も持たなくていい。
そんな話をしてから香奈ちゃんとの距離は、これまでよりもっともっと近づいたと思う。
写真を見ながら、瑞穂さんは視線を落としてぽつりと呟いた。
「香奈はあの事件に遭って、元々大人しかったのにもっと臆病になって、ますます引っ込み思案になっちゃった」
「うん、知ってる」
「でもさ……、認めたくないけど、オッサンといる時の香奈はすごく自然体だと思う。……悔しいけどね」
そうなの?それ、すごく嬉しいなあ。
「ホント?」
「ホント!だからね……、香奈のこと、よろしくお願いします」
瑞穂さんは深々と頭を下げた。
その予想外の行動に驚いて目を見張る。
「や、やだなあ、……やめてよ。らしくらないよ?」
顔をあげると、瑞穂さんは照れたようにニヤッと笑って、どっこいしょとまたソファーに腰をかけた。