残業しないで帰りたい!
藤崎くん、なに必死になってるの?
もしかして、あの子のこと、好きなの?
あんな地味で奥手で、何一つ取り柄もないような子?
だいたいアンタ、誰かを好きになることなんてできるの?
あのアンタが?
信じらんない!
でも……。
藤崎くんのこんな必死な姿、見たことない。
初めて見る姿。
本気なの?
そんなに好きなの?
……私のことは好きじゃなかったくせに。
ホント、ムカつく。
ムカついた気持ちが思わず口調に出てしまう。
「ちょっと接待頼んだだけじゃない!それに、たとえ営業じゃなくても、結果的には会社の利益になるんだから、社員なら接待くらい当然でしょ!」
「そんな古い考え方、もう通用しないよ」
「っ!」
なんですってえぇ!
私のこと、古いって言ったの!?
カッチーン!
私が時代の流れを受け入れられない頭の固いオバサンみたいな言い方しないでよ!
そんなことないんだからっ!
ホンットむっかつくー!!
「古くなんてないわよ!私は当たり前のことを言っただけじゃない!」
「俺たち世代の営業にとっては当たり前でも、青山さんは営業じゃないんだ」
青山さん青山さんって、うるさいわね!
「なんであんな子がいいのか知らないけど、ああいう子が好みな男は多いみたいだから、以後も必要があればあの子には接待に来てもらうからねっ!」
ムカついたから、わざと強い口調で意地悪を言うと、思った通り藤崎くんはムッとした顔をした。
アンタも含めてあの副社長といい、あんな子のどこがいいのか、サッパリわかんない。