残業しないで帰りたい!
背が高くてまあまあスタイルもいい方なのに、それを活かすこともなく地味で、大人しくて、自信のなさそうな子。
だいたい地味にもほどがあんのよ!
社会人として、少しは化粧しろっての!
あんな、バカ真面目だけが取り柄みたいな子。
知識も向上心も全然なさそうな子。
カラオケ行ったら、直立不動でマイク両手で持ってまっすぐな声で歌っちゃいそうな、あんな子のどこがいいって言うのよ!
藤崎くん、ああいう子がタイプなわけ?
じゃあ、私なんか全然タイプじゃないじゃん!
私のことなんか、好きになるわけがなかったんじゃない!
なんで付き合ったりしたのよ!
……まあ、私が付き合ってって言ったからなんだけど。
だって、私は。
私は……、好きだったんだもん。
それなのに、コイツは。
ホント、ムカつく……。
ムッとした顔の藤崎くんを睨み返した。
「私、忙しいの!くだらない話で引き止めないで。早くそこ、どいてっ!」
私が一歩足を踏み出した途端。
ダンッ!!
壁を叩く大きな音に驚いて、思わず目をつぶった。
目を開けると藤崎くんが壁に手を当てて、すごく怒った顔をしていた。
藤崎くん?
今、壁、叩いたの?
アンタ、そういう乱暴なことしなかったよね?
何?その鋭い視線。
「青山さんには近付くな。いいな?」
なによ……その低い声。
さっきまでなよなよしてたくせに。
何で急に男っぽい強い言い方なんてするの?
アンタに指図されるなんて、腹立つ!
「偉そうに私に指図なんかしないで!昔付き合ってたからって、イイ気にならないでよ!」
「そんな10年前のことなんか考えてない」
10年前じゃねーよっ!12年前だよっ!
あの時私たちはまだ23歳だった。
若かった。
若気の至りだったんだ。
そう、思いたいよ……。