残業しないで帰りたい!

あれから12年。

あの時、別れなかったら結婚していたかもしれない。もしかしたら、子どもとか大きくなっていたかもしれない。……なんて考えてしまう。

でも、別れて正解。
藤崎くんはいつまでたっても私に興味がなかった。いつかは別れることになっただろう。

そんな藤崎くんが今、女のためにマジになってる。

コイツが人を好きになることなんて、絶対ないって思ってたのに。

なんか、すごい悔しい。

あの時は私一人で苦しい思いをしたっていうのにさっ。

超受け身男のくせに、なにその積極性!

藤崎のくせに、恋なんかしてんじゃねーよっ!

だいたいコイツは私と別れた後、社内で女を作らなかった。きっと面倒くさかったんだろう。
私と付き合ってた時、注目されていろいろ言われたから、社内恋愛には懲りたらしい。

それなのに……。

あの子、うちの社員ですけど?
社内恋愛はしないっていうアンタの主義に合わないんじゃないの?

「……ごめん」

「何がごめんなのよっ!」

いろいろ思い出したせいか、イラッとして声がでかくなる。

「大きな音出したりして、ごめん」

「……」

ホントだよ、柄にもなく壁なんか叩いちゃってさ。ビックリしたよ。

「でも、もう青山さんに接待はさせないで」

「しつこいわねっ!わかったわよ!もう声かけないから!閉じ込めたりして悪かったわよ」

あの子は応接室でお茶を出させた時、男の視線を感じるだけで怯えていた。そんな子を部屋に男と二人きりで閉じ込めたのは可愛そうだったかもしれない。
さすがに……悪いことをしたと思う。

あの若い副社長は彼女にご執心だったから、あの子にとっても、うちにとってもおいしい話かと思ったんだけど。
あの子ったら興味がないどころか二人きりにしたら倒れたりして。

あの子……、なんかあるんだろうな。

あんな風に怯えたり倒れたりするなんて、普通じゃない。なんかトラウマでもあるのかもしれない。それもマジなやつ。
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