残業しないで帰りたい!

2年前、横浜支社に異動して1年が過ぎた頃、入社式に出席するため、本社に行くことになった。

前の日も本社で会議があったのに、2日も連続で本社に行くなんてめんどくさい。
横浜から池袋ってけっこう遠いんだよ?お偉いさんはわかってないなあ。

でも、入社式には人事課長は必ず出席するようにとのお達しが出ていたから、どうしようもない。

「おう、藤崎!昨日はあの後どうだった?」

壁に寄りかかってぼーっとしてたら、同期の新田が話しかけてきた。

「んー?特には……」

昨夜は久しぶりに新田と飲みに行った。

新田は昔ラグビーなんかやっていて、見た目からしてゴリゴリの体育会系だ。うちの営業にはよくいるタイプの男。声がデカくて、喋り方にも勢いがある。

昨日もほろ酔いでご機嫌な新田の声はデカかった。

「先週の高松宮、大穴だっただろー?あれ、俺当てちゃったんだよ!」

「へえ?俺、もう競馬やってないからよくわかんないな」

「来週は桜花賞だよ?女の子の祭典だよ?買おうぜ!」

「んー?やめとくよ。どうせ当たんないもん」

「競馬は当たる当たんないじゃないんだよ?とりあえずやっとけ。取引先のお偉いさんたち、結構競馬好き多いからさ。営業の時、話のとっかかりになるぜ」

「ふーん……」

相変わらず競馬好きな新田。楽しかったけど、今もイキイキと営業をやってる新田の話は少し辛かった。

俺も営業やりたいなあ。
いつかは戻れるんだろうか。

そんなことを思ったりして。

そして、昨夜はよくあるパターンで、女の子二人組が声をかけてきた。

新田はこれが狙いで俺と飲みに行ってる気がする。
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