残業しないで帰りたい!

そういう時、俺はあまり喋らない。新田がお喋り担当になる。
そうすると、たいてい女の子のうち一人はお喋りな新田にベッタリになる。

まあ、二人組の女の子は、声をかけてくる前にどっちをターゲットにするか相談しているんだろう。

俺たちはタイプが真逆だから、体育会系か文系か選べるからね。

昨日もそうだった。

一人は酔った新田にくっついて夜の街へ消え、もう一人はしつこく俺を誘ってきた。

新田は腕組みをして俺の横に並ぶと、目を細めて俺を睨んだ。

「特には?俺、あの子の方が良かったんだけどな。デカパイだっただろ?」

新田の言い方、古いなあ。そしてえげつない。久しぶりに聞いた。

「どうだろ」

「え?なんだよ、オイ。お前、あのまま帰ったのか?枯れてんなあ」

「……そうねえ」

言われてみたら、確かに胸はデカかったかもしれない。

「もったいねえな。あんなデカいの、絶対いいに決まってんだろ?」

「いや……普通だったよ」

「……ん?お前ね……、やったんならやったって、ちゃんと報告しなさい」

なんで新田に報告しなきゃいけないんだ?

「君の方の感想を聞くつもりはないよ」

「はいはい」

体の関係なんて、一晩限りの方が気楽でいい。

ああやって遊びで誘ってくる女の子は、目的がハッキリしている。
要はやりたいだけでしょ?

俺にだって許容範囲はあるけれど、声をかけてくるような子は自分に自信のある女の子だ。逸脱してる子はほとんどいない。

とはいえ、ろくに憶えてもいないけど。

昨日の朝食べたカップラーメンの種類を憶えていないのと同じくらい、昨日の夜抱いた女の子の顔も名前も体も憶えていない。
憶える必要もないし。

だから、気が楽でいいんだ。
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