残業しないで帰りたい!

初めて彼女を見たのは、入社式の時だった。

彼女は新入社員の女の子の中では背が高くて、みんなタイトスカートなのに一人だけパンツスーツだったから、少し目立っていた。

あ、可愛いかも。

見た瞬間そう思った。
いつもはそんなこと思わないんだけど。

あれはノーメークだろうか。そんなわけないか。でもほとんどしてない。今どき珍しいな。

笑った雰囲気は穏やかでおっとりした感じ。

ずいぶん茶色い瞳だな。
ハーフって感じでもないけど。

あんなに綺麗な髪なのに、なんで短くしてるんだろう。
伸ばしたら綺麗だろうな。

わずかに赤みがかった頬。柔らかそう。

……触ってみたい。

そこまで思って、自分に少し違和感に覚えた。

彼女のことばかり見てしまう。
彼女のことばかり考えてしまう。

でも、まだ俺は自分の気持ちに気が付いていなかった。

名前はなんていうんだろう?
すぐに調べた。

管理職用の資料をペラペラとめくる。
昨日もらったのに全く興味がなくて見てもいなかった資料。

『青山香奈』

ふーん。年は……22歳か。若いなあ。まあ新入社員だからそりゃそうか。

おっ!配属は横浜支社になってる。
やった!一緒だ。

あっ、でも営業支援係だ。人事課じゃないのか……。まあ今年、人事課は誰も異動しなかったからね。仕方ない。

高校も大学も横浜……。ふーん、ずっと横浜に住んでるんだ。

資料の隅から隅まで目を通す。

趣味は音楽鑑賞と読書ねえ……。まあ、表向きには書きがちな内容。
本当の趣味は何だろう?

青山さんのこと、もっと知りたい。
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