残業しないで帰りたい!
まあ、課長なんて立場になっちゃったわけだし、せめて俺の課は変に厳しくしないでみようかな。
厳しくしなくても、俺に求心力があって部下がちゃんとついてきて仕事するなら、それでいいわけだし。
なんて思ったりして。
もちろん来たばかりの頃は求心力なんて、全くなかった。
でも、大塚が俺をアンタ呼ばわりなんてするもんだから、人事課に来て早々ちょっとした事件が起こった。
突然、営業課長の横井さんが人事課にやって来て「上司をアンタとは何事だ」と大塚を激しく叱責したのだ。
デカい声が響いて、人事課はシンッと静まり返った。
横井さんは俺の先輩にあたる。そして俺のことがあまり好きではない。
横井さんは体育会系の営業だ。上下関係もこだわるし、力でごり押しすればなんとかなると思っているタイプ。きっと営業課の部下だって力でねじ伏せているんだろう。
だから、俺が大塚を放置しているのが許せなかったんだろうし、だらしないお前に代わって俺が叱ってやるっていう嫌がらせのつもりだったんだと思う。
つまり、横井さんの行動は俺に対する当て付けであって、大塚は犠牲になったにすぎない。
大塚はプライドが高いから、部下の前で叱責されるなんて、悔しくてたまらなかっただろう。
関係ない大塚を巻き込むなんて、正直俺もかなり頭にきた。だから、珍しく立ち上がって戦ってしまった。
「大塚は俺の部下です。余計なことはしないでいただきたい」
「はあ?お前が甘ちゃんだから、代わりに叱ってやってんだ。お前がそんなんだから、部下がろくな言葉使いもできない能無しなんだよ」
「俺の部下は有能ですよ?むしろ、成績が悪くて有名な営業課の方が問題なんじゃないんですか?」
横井さんはピクッと反応して、みるみる顔から頭まで赤くなるのがわかった。