残業しないで帰りたい!

横浜支社の営業成績が悪くて有名なのは本当のことだ。原因はいろいろあるけど、横井さんのせいでもあると俺は思っている。

言われたくないことを指摘されて、横井さんはあっという間に真っ赤になった。

湯気が上がりそうな横井さんの殺気にピリッと怯えて凍りつく人事課一同と大塚……。

あらあら。
こんなの、ビビることじゃないよ?大塚も意外と小心者だね?営業には向かないなあ。

怒り心頭の横井さんにニヤッと笑いかけた。

「威圧されて萎縮して言いなりになってる部下より、自発的に自分の立場を理解して上司を支える俺の部下の方がよっぽど優秀ですよ?」

実際、人事課の人たちは俺が何も言わなくても本来の仕事以上の成果を出している。新しい提案とかもしてくれるし。
俺にはありがたい限り。

横井さんは目を細めた。

「ケッ、自分が舐められてるってことくらい、気が付けってんだ!」

捨て台詞を吐いて横井さんはそそくさと去って行った。

情けないなあ。
俺ごときに返り討ちにあうなんてね。

その後ろ姿を見ながらゆっくり席に着く。

「まあ、君たちはね、ダメな課長を支える優秀な部下ですよ」

凍りついた人事課一同にそう言うと、ほっとした空気が流れて、それから少しは部下の俺を見る目が変わったと思う。

そもそもこの件は、俺が横井さんに嫌われてたのが原因なんだけど、ダメダメのん気な俺だって部下を守るくらいのことはしますよって意思表示はできたらしい。

求心力とまでは言わないけど、やる時はやるってみんなに認識してもらえたかな?
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