さくら
志信も桜子の傍らに膝をついた。
「毎日辛かったら早く連絡してきたら良かったんやで」
桜子が少し俯いて困ったような顔をする。
「・・・・・ママが涙が出るうちはまだ我慢できるって」
そこにいた志信も藤子も聡志も桜子の言葉に胸をつかれた。
この小さな少女は母の死後、どれだけの涙を流したのだろう。恐らく未散も、誰も頼る人のいないところで桜子を一人で産み、一人で育て、涙が出るうちはまだ我慢できる、頑張れると生きたのだろう。万が一、幼い桜子を残して逝くようなことがあったら・・・・・それは桜子にとって決して幸せな環境にはなり得ないことを見越して、後藤家の連絡先を書き残したのだ。