さくら
後藤家の誰もが桜子にかける言葉を探しているなか、桜子が常夜灯がぼんやり灯る中庭に気が付いた。
「わあ・・・・・桜だ・・・・・」
窓辺に駆け寄って窓ガラスに額をつける。藤子がその後ろに立った。
「来週には咲くわよ」
「桜子の名前、ママが働いてた病院にすごく綺麗な桜があったからつけたって・・・・・」
まだ蕾の桜に見入る儚げな幼い少女の横顔ーーーーーーー。
藤子が堪えきれなくなったのか、桜子を抱きしめた。
「桜子ちゃん、今日からウチの子やからねーーーーー」
藤子の腕の中で桜子が一瞬息を飲む。志信と聡志をかわるがわる見て、どちらも笑顔であることを確認すると、安心したように息をついた。