千年姫の幻想界
「少し休んで戻りましょう。
さあお座り下さい…日陰なら涼しいですから」
「そうね…有り難う」
二人で泉の近くの岩に腰をおろす。
「それで、先程の話ですが……。
地面が歪んだ、と?」
「ええ……ずっと猫ちゃんの後を着いていってたのだけれど、止まったと思ったらそこの地面が突然ゆらりと……」
目を瞑って思い出す。
「華様、その時既に熱射病だったのでは?」
地面が突然歪むなど、まず有り得ない。
「……そうよね。急な坂を上ったりしたし。
普段は遠くに行かないものね……」
華と遊びたかった猫は宛もなく歩き、たまたまあの場所で止まった。
華は熱射病になりかけていた。
……そういう結論に至った。
「もう、驚かせないで下さいよ~。
地面が歪むだなんて、どのような異変かと」
「本当、嫌だわ……本気で悩んでしまって 。
帰りましょうか!
随分と長居してしまったわ……」
華も苦笑いする。
少しづつ、昼の暑さが和らいでいく。
少し急いでいたが、華達は飛行術ではなく歩いて帰る事にした。
術に頼ってばかりで楽していると、自分の体が弱っていく。
今日のようなことを避けるため……自ら動こうと思った。
二人は懐いてくるこの白猫を飼いたい、夕食は何か、他にも噂や事件など色々話しながら屋敷に帰った。
先程の事など、もう気にも止めていなかった──