千年姫の幻想界

「少し休んで戻りましょう。

さあお座り下さい…日陰なら涼しいですから」

「そうね…有り難う」

二人で泉の近くの岩に腰をおろす。


「それで、先程の話ですが……。

地面が歪んだ、と?」


「ええ……ずっと猫ちゃんの後を着いていってたのだけれど、止まったと思ったらそこの地面が突然ゆらりと……」

目を瞑って思い出す。


「華様、その時既に熱射病だったのでは?」

地面が突然歪むなど、まず有り得ない。



「……そうよね。急な坂を上ったりしたし。

普段は遠くに行かないものね……」


華と遊びたかった猫は宛もなく歩き、たまたまあの場所で止まった。

華は熱射病になりかけていた。

……そういう結論に至った。


「もう、驚かせないで下さいよ~。

地面が歪むだなんて、どのような異変かと」


「本当、嫌だわ……本気で悩んでしまって 。

帰りましょうか!
随分と長居してしまったわ……」

華も苦笑いする。


少しづつ、昼の暑さが和らいでいく。

少し急いでいたが、華達は飛行術ではなく歩いて帰る事にした。

術に頼ってばかりで楽していると、自分の体が弱っていく。

今日のようなことを避けるため……自ら動こうと思った。

二人は懐いてくるこの白猫を飼いたい、夕食は何か、他にも噂や事件など色々話しながら屋敷に帰った。


先程の事など、もう気にも止めていなかった──

< 18 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop