千年姫の幻想界
───
──



「ああ~!

やっと見つけましたよ!」

暫く戻ると、式が小走りに向かって来た。

「はぁ、はぁ……。

華様……!

何故このような場所へ?
言玉一つで!

私など叩き起こしていただいて良いのです。

ですから……もうお一人で……」


最初は勢いよく出てきた言葉達も、最後には枯れるように小さくなっていく。

目には、うっすらと涙の膜が張っていた。


「御免なさい式……。心配してくれて有り難う」


「いいえ、当然です……。


……大切に使っていただき、有り難う御座います」


一瞬考えて、それが眠っている式を起こさなかった事だと分かった。

気持ち良さそうに寝ていたので、起こすのが躊躇われたのだ。


「貴方は目を開けた時点で“物”ではないわ。

卑下せず私達と同じように暮らせば良いの」


「……はいっ」

ぱあっと式の表情が輝く。

元は紙なのに、ヒトと同じように扱ってくれる主などそう居ないだろう。


改めて主への忠誠を深める式だった。



「みゃー!」

そのとき、華の腕の中の猫が鳴いた。

「あ、式……あのね、この子に着いて行ったのだけれど……この子が示した地面が歪んだのよ。
何故だか分か──」


そう言いかけて、クラリと目眩がした。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。
少し……暑さに負けてしまったみたいね。

いつもは涼しい部屋で稽古をしているから」

< 17 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop