こんなお葬式【長篇】
─雰囲気的には長い病室生活やな……。

─ベッド回りを見たら、急な感じではないですね。

─ナース達も呼びなれた感じで名前呼んでたしな。ある程度遺族も考えてるやろう。打合せも短くて済むかも知れんな。


通常、搬送先は遺族の希望を聞き、自宅や葬儀社、若しくは葬儀会館へ直接向かう。

名目……。

搬送業者の仕事としては、お送りするのが主になるが、いかにして葬儀会館へ連れて行くかが肝になる。

僕達が、業務「営業」と呼ばれる由縁だ。

会館には小さい遺体安置室があり、式まではそこに安置出来るようになっている。

車に乗車して病院を出てから、自宅と葬儀会館への別れ道までが一つの営業分岐になるのだ。


そうやってしばらく話していると、看護士が僕達を呼びに来た。

─ご遺族、戻られましたよ。

─あぁ、はいはい。ありがとうございます。

病室へ戻る僕達の、いつもの遺族“達”のイメージとは違い、


そこに居たのは、たった一人の、


おばあさんだった……。

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