こんなお葬式【長篇】
小さく揺れる炎を、黙って見つめるおばあさんの丸い背中を見ながら、僕は静かに口を開いた。

─それでは間も無く、御導師様のご入場になります。ご入場の際にはご合掌にてお出迎え下さい。

静寂の小さな部屋。

しかしその頃には、数名の社員がサポートと参列を兼ねて駆け付けてくれていた。

日中の勤務時間という事もあり、昨夜の通夜では帰宅していた者も数名来てくれていた。

何も促さず、住職の案内にスタンバイしている者。

焼香台の準備をしている者。

忘れていた「1通だけの」弔電を用意してくれている者。

外には、霊久車の到着誘導に待機している者もいる。

全てが、無言の中で動き、全てがこの告別式の参列者である。


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