こんなお葬式【長篇】
満を持して気合いの一言を伝えようと、部長が振り返ったその時、

─あのっ……!お葬式をしてあげたいんですっ!

部長よりも先に口を開いたのは……

おばあさんだった。


唐突で予想外の言葉に、部長も僕も言葉に詰まった。

というよりも、言葉を奪われたのだ。

─お花をね……、 渡したいんです。私しか見送る者もいてないんです。

言葉を決めていたようにおばあさんは話した。

─あぁ、葬式は私らも扱ってますよ。

何とも不細工な台詞を口にする部長。

しかし、おばあさんの言葉にはこんな台詞しか出てこない部長を責めはしない。

まだ続きがありそうなその雰囲気に、僕も部長もただ黙るしかなかったのだ。


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