こんなお葬式【長篇】
お婆さん
─起きろ……。仕事やぞ。

いつもの少し眠たげな、僕の仮眠を遮る声で目を覚ます。

僕のペアは業務営業の部長だ。

─……。

─おい、起きろて!仕事入ったぞ。

少し急ぎ口調の部長は、Yシャツをはおりながらグズる僕をまくしたてた。

─あ、すいません……入りましたか?何時の着ですか?

病院からの依頼の電話では、大抵迎え時間の指定があった。

死亡を確認してからの処置や、遺族の何がしかの準備の為だ。

僕達は、到着時間に照らし合わせ、幾つかある契約病院、若しくはご自宅までの距離を逆算して準備にかかる。

─五時半着やけど、遺族が急に自宅へ戻ったみたいやから病院到着後に待機や。全く身内が死んでどこ行ってんねやろな。

僕は携帯電話で時間を確認する。

─四時半……。病院は何処ですか?

─教和台病院や。15分もあれば着くけど、少し早めに到着しよか。

俺が布団から這い出す頃には、すでに部長はネクタイを締め、薄い頭の手入れをしていた。
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