こんなお葬式【長篇】
仕事が発生した時点で誰かが死亡しており、初めて会った時にはもはや亡骸なのである。

病院、自宅、警察、もちろんそれ以外の場所でも……。

場所はどこであれ、赤の他人である故人は「死体」そのものなのである。
場合によっては、人の面影からも遠のいている場合も多々あるのだ。

相手に対して、自分自身「心」や「情」はなかなか持てず、相手もまた、もはや「心」など既に存在しない。

仕事の依頼主は、当の本人ではなくその身内であり、主役はご遺体なのだ。

今まで何となく抱えてきた奇妙な感覚。それが何故かあのおばあさんを見て、リアルな実態として心に浮き出てきていた。

送る側と送られる側。
依頼主と、導く仕事……。

僕はあの、懸命な依頼主であるおばあさんに、何かがしたかった。


無論、仕事として……。


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