こんなお葬式【長篇】
部屋が落ち着きを取り戻した頃、予想外に通夜らしくなった事に感激しながら、思い出したかの様におばあさんは僕に尋ねた。

─ここはいつ外出してもいいんですか?

─夜中に出られるのなら、田下にお声がけ下さい。お戻りになられたら鍵がかかっていると思われるんで、インターホンで呼び出して下さいね。

よくされる質問だったので、何も考えずにそう答えたが、買い物に出る方も多いので気に留める事もなかったのだ。


僕はまだおばあさんを侮っていた。


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