長すぎた初恋の延長戦

きみにこくはく

「体育祭の、じんくす…。」
「うん。告白のチャンスだと思うけど。」

フォークダンスの最中、好きな人に告白すれば必ず上手くいく。
そんな在り来たりなジンクスに踊らされたのは…もちろん、私です。
…もし。あの頃に戻れるとしたら、私はこの告白を止めたのかな。



「赤ー!いけいけ赤ー!吹っ飛ばせー!」
「青ー!抜かせー!」
「黄色ー!がんばれー後ちょっと!」

空気中を舞う砂埃に、私は幾度か目を擦った。

「もうそろそろでフォークダンスだねー…。」

ポツリと、どこかうわ言の様に呟かれたその言葉に、私は静かに一つ頷く。
高校生活初めての体育祭も、もうすぐ終わりを告げる。
確かあと残ってる競技は…部活対抗リレーと、フォークダンス。

「本当にするの?…告白。」
「あんなにしろしろって言ってたじゃん。」

そんな話をしている内に団対抗リレーが終わって、続々と部活対抗リレーの出場者が集まってくる。

文也の姿は……あった。あのバスケ部の人集りの中。
男子にしては少し小柄な文也は、背の高い人達の中で逆に目立ってしまっていた。

「ねえねえ、丸井くんって可愛いよねー。」
「ね、なのにちょっと俺様な所がいいかもー。」
「て言うかツンデレじゃね?」
「それ分かるー。」

応援席から文也の後ろ姿を何と無見つめていると、近くにいた女子の集団がキャッキャお喋りしているのが偶々聞こえてしまった。

「倍率高いなー…。」

別に、知ってた事だけど。
告白前にこんな騒がれている所を目撃してしまうと、何と言うか自信喪失だ。…いや、元々自信があったのかと言われれば、勿論そんな事は無いんだけど。

そもそも私が告白を決めたのは…文也が女子からあまりにもたくさん告白を受けていたから。
いつか文也が他の子のものになって、想いを伝えられなくなるくらいなら…振られるのを覚悟で告白した方が良いと思った。

ジンクスに便乗したのは、ただタイミングが欲しかったってだけ。
別に、その効果を期待してる訳じゃない。

私の告白は、振られる事が前提。
だから文也が人気者だって落ち込む事なんて無いのに。

「なんでかなぁー…。」

みんなの応援の声を他所に、私の気分は落ちていくばかりだった。


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