イジワル婚約者と花嫁契約
すると単純なお兄ちゃんはすっかり上機嫌になる。

「灯里になに選んでもらおうかな。スーツがいいか?それともネクタイ?……いや、普段着がいいか?」

頭の中はそのことでいっぱいのようだ。
私の服から気持ちが反れてくれたことにホッとした時、お兄ちゃんのスマホが鳴り出した。

「ちっ、誰だ?こんな時に」

舌打ちをし明らかに不機嫌な様子で相手を確認するお兄ちゃん。
どうやら相手は田中さんだったようで、「悪い」と一言残し、電話に出るため人が少ない場所へと行ってしまった。

「大変だな、本当」

人混みに消えていくお兄ちゃんの姿を見つめたまま、つい漏れてしまう。

休日でも関係ナシだものね。
第一一日しっかりと休める日は限りなく少ないし。

このままここで立ち尽くしていても仕方ないと思い、近くのソファーに腰掛けた。
休日ということもあって、ショッピングモールは賑やかだ。
そんな中でひとりでいると虚しくなる。

寂しさを紛らわすようにおもむろにスマホを取り出し見ると、そこには新着メールありの文字が映し出されていた。
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