イジワル婚約者と花嫁契約
夜風が強く、料理店の個室からそれぞれ賑やかな声が聞こえてきた。

「ちょっと肌寒いね」

日中は暑かったというのに、夜ともなると半袖では肌寒くて腕を擦ってしまう。

「ほら」

するとすかさずお兄ちゃんは、自分が着ていたシャツをそっと私にかけてくれた。

「え……でもお兄ちゃんも寒いでしょ?」

「俺はいいから。灯里に風邪引かれたら困るし」

そう言って笑う笑顔が眩しい。

お兄ちゃんは昔からそうだった。
優しくて、笑顔が素敵で。誰よりも大切に思ってくれる。

「私だってお兄ちゃんに風邪引かれたら嫌だよ?」

たまにどうしようもない時もあるけれど、私も同じようにお兄ちゃんが大切。
だから私のせいで風邪引いちゃったら困る。

せっかくかけてもらったシャツをお兄ちゃんに差し出した。

「寒くなってきたし、そろそろ帰ろう?せっかくの休みの日に付き合ってくれて本当にありがとう。……すごく楽しかった」

「灯里……」
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