イジワル婚約者と花嫁契約
笑顔で感謝の気持ちを伝えるものの、お兄ちゃんはシャツを受け取ろうとはせず、私を凝視したまま固まってしまった。

「……お兄ちゃん?」

どうしたのだろう?と思い声を掛けた瞬間、大きく手を広げたと思ったらその腕に身体を包まれてしまった。

「えっ!?」

「あーもう!!どうしてこんなに可愛いんだろう!!」

苦しいくらい抱きしめてくるものだから、言葉を出すこともままならない。

「ちょっ、ちょっと……!」

「また今度デートしような!灯里の行きたいところなら、世界中どこだって連れていってやるから」

こうなってしまったらどうしようもない。
お兄ちゃんが落ち着くまで待とう。
長年の経験上そう判断し、お兄ちゃんに抱きしめられること数十秒――。

「灯里?」

異様に怒りの籠った声にビクッと身体が反応してしまった。

――え?この声って……。

聞き覚えのある声に急激に胸が高鳴り出す。

「誰だ、お前は」

そして頭上から聞こえてきたのは、同じく怒りを含んだお兄ちゃんの声。
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