イジワル婚約者と花嫁契約
千和さんに言われ、おもむろに頬に手を触れれば冷たい感触。

やだ、私ってばいつの間に……?

「私が電話している間に、なにかあった?」

心配そうに見つめてくる千和さん。

「あっ……」

自然と向いてしまうのは、ジュエリーショップ。
だけどさっきまでいた場所に、ふたりの姿はなかった。

やだ、もしかしてもう買い物が終わって外に出てくる?

「すみません、ちょっと気分が悪くなってしまって。今日はここで失礼します」

「え……あっ!ちょっと灯里ちゃん!?」

一方的に告げその場から勢いよく走り出した。

だって健太郎さんに見つかっちゃったら大変だもの。
健太郎さんとあの女性と、鉢合わせるのなんて絶対に嫌。

千和さんには申し訳ないと思いつつも、逃げるように最寄り駅へと向かう。

その途中も涙は止まらず溢れ続ける。

最悪すぎる。なにこの結末。
嫌々お見合いして、その相手はとんだ二重人格者で。
そんな人に私は恋をしてしまった。
健太郎さんには一緒にジュエリーショップに入るような存在の人がいるとも知らずに――……。

ひとり勝手に盛り上がっていてバカみたいだ。
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