イジワル婚約者と花嫁契約
お兄ちゃんの心配は、とんだ取り越し苦労だ。
浮気とか二股とか。全然そんなことじゃない。
健太郎さんにとって私は、なんでもない存在だったんだよ、きっと――……。

「……っ」

ますます胸が痛む。

もう本当に最悪だ。
こうなってしっかりと自覚してしまった。……こんなに胸が痛むのは私は健太郎さんのことを好き、だからだ。
好きだから悲しくて苦しいんだ。

他の女の人と一緒にいるところを見ただけで、こんなに胸が痛んでしまう。
いつの間にこんなに好きになっちゃったんだろう。

「灯里ちゃん、ごめん!待たせちゃって――……っどうしたの!?」

「――え?」

電話が終わり戻ってきた千和さんは、私の顔を見るなりギョッとした。

「えってなに言ってるの!」

そう言いながら千和さんが慌てた様子で鞄から取り出したのはハンカチ。
それをそのまま私に差し出した。

「そんなに涙流しちゃって。なにがあったの?」

「なみ、だ……?」
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