イジワル婚約者と花嫁契約
「待てよ!」

あっという間に追ってきた彼に腕を掴まれてしまった。

「むっ、無理ですから!」

逃げたい一心で必死に解放されようともがくけれど、もがけばもがくほど彼は腕を掴む力を強めた。

「悪いけどなかったことになんてできないから。……さっき言っただろ?今すぐ俺を好きになれって」

その言葉に、もがく力を失ってしまう。

最初聞いた時は信じられなくてふざけている人だって思った。
おまけに二重人格だし、失礼な人だし。
でも、今の彼は……?

腕を掴まれたまま視線は彼の瞳を捉える。

真剣な面持ちで、とても冗談を言っているようには見えない。
だけどそうはいってもどうしてなの?……どうして私なの?

「あの……どうして私なんですか?……上司とかに言われてですか?」

そうだよ、佐々木さんならきっと女性の方が放っておかないはず。
病院でだってモテているに違いない。

「付き合いとかで断れない、とかなら言って下さい。そこはうまく父に言いますから」

「だから違うって言ってんだろ!?」
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