イジワル婚約者と花嫁契約
「……すみません」

胸が鳴ってそしてなぜか泣きそうになる。
好きだから? さっきのことがあったから?
理由は分からないけど、少しでも気を緩めてしまえば一気に涙が溢れてしまいそうだ。

「また今度リベンジな」

その言葉と共に頭に触れたのは大きな手。
子供をあやすように二回ポンポンされただけで、心臓が飛び出しそうだ。

健太郎さんが好き。……好きだからこそ不安になる。嫉妬してしまう。
悪循環なこの感情をどうにかすることはできるのだろうか……?


それから健太郎さんはちゃんと自宅まで送り届けてくれた。




「千和さん、この書類のまとめ方教えてもらってもいいですか?」

「OK、ちょっと待ってて。これ終わりにしちゃうから」

どんなに落ち込んでも朝は必ずやってくる。
今日もまた朝からお兄ちゃんの厳しい監視の元、通勤すると忙しない一日が始まった。

「分かりました、ありがとうございます」

「いいえ。また分からないことがあったらいつでも聞いて」

だけど今の私にはこれくらい忙しない方がいいのかもしれない。
だって少しでも気を抜いてしまったら、バカみたいに色々なことを考えてしまいそうだから。
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