イジワル婚約者と花嫁契約
これからしばらくの入院生活、こうして一人で過ごすのかと思うと不安になる。

個室っていうのもよくないのかも。
大部屋もあるはずだよね?お兄ちゃんの話だと、この部屋用意してくれたのは健太郎さんだって言っていたし、今度病室に来てくれたとき、お願いしてみようかな。

そんなことを考えていた時、病室内が静かだからか、廊下外の声がよく聞こえてきた。

「……えー嘘!それ本当なの?」

「シッ!聞こえちゃうでしょ?」

聞こえちゃうって言われても、しっかりと聞こえているんだけどな。
見られていないとはいえ、なんとなく気まずくて聞いていないフリをするように、テレビでも見ようとリモコンに手を伸ばした時。

「ショック!佐々木先生に婚約者がいるとか」

佐々木先生……?それって健太郎さんのことだよね?

盗み聞きはよくないと分かっているものの、健太郎さんの話となると聞かずにはいられない。

テレビをつけるのは止め、静かに息を呑みながら話に耳を傾けた。
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