イジワル婚約者と花嫁契約
一段と盛り上がる梅沢さん達と違い、私の頭の中はパニック状態だった。


梅沢さん達の話は真実じゃないよね?
だってお父さんもお母さんも、そんなこと一言も言っていなかった。
健太郎さんだって――……。

でも健太郎さんがここの跡取りってことは間違いなさそうだし、それを私に言わなかったのかなぜ?
別に言う必要なんてなかったから?……それとも知られたらまずかったから?

だめだ。ついさっき健太郎さんのこと信じようと思ったのに――……。

どれも信じがたい話だけど、疑わずにはいられない。

個室にひとりという孤独感もあって、一気に不安が押し寄せる。

ただの噂……だよね?
そうだよ、健太郎さんはそんなこと言っていなかった。お父さんもお母さんだって。
だったら私は健太郎さんと両親を信じよう。
さっきの話は聞かなかったことにしよう。

そう心に決め、全てを忘れるように固く瞼を閉じた。
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