イジワル婚約者と花嫁契約
「嫁になるための十ヶ条?ってまさか……」

メールを開いてみると、やっぱり予想通りのことが送られてきていた。

【第三条 名前で呼び合うこと】

電話はできないけれど、メールはできるってことなのかな?

そう思い、すぐに【名前で呼んだので、理由を教えて下さい】と送った。
すると数分後返信メールが届いた。

少しだけドキドキしながら開いたものの、まさかの内容に目を見張る。

【今度デートしよう。その時教えてやる】

「なにこれ!ずるい!!」

なんだか逃げられてしまった気分だ。

「……名前で呼び合うこと、か」

“灯里”と“健太郎さん”

呼び方が変わっただけだというのに、なぜか彼との距離がぐっと近づいた気がしてしまう。
しかも何?デートとか。
それって本当、順調に交際へと……いや、結婚への道を進んでいってしまっているような気がしてならない。

そうは分かっていてもなぜだろうか。
以前ほど嫌悪感を抱かないのは――……。

少しだけ変化してしまった自分の気持ちに戸惑いつつも、悩みに悩み【考えておきます】と返信した。
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