イジワル婚約者と花嫁契約
『それは俺のこと、名前で読んだら教えてやるよ』

「は?」

つい本音が漏れてしまった。

『だから呼べよ』

急かしてくる彼に、沸々と苛々が込み上げてくる。

名前を呼ぶことと、結婚したい理由を話すことを交換条件に出してくるなんて……!
どう考えても私の質問の方が大きな意味があるはず。
だって大切なことでしょ?気になるじゃない!どうして私と結婚したいと言ってくれたのかが。

あぁもう!こうなったら意地でも聞いてやるんだから!

『ほら灯里、早く――……』

「健太郎さん!」

彼の声を遮るように呼べば、さっきまで休む間もなく話していた声がパタリと聞こえなくなった。

あれ……?聞こえなかったのかな?

「健太郎さん……?」

再度呼びかけた瞬間、電話越しからは通話が切れて音が聞こえてきた。

「え、切れた?」

耳元から離し画面を見るも、やはり通話が切れていた。

どうしたんだろう。病院から電話がかかってきたとか?
そもそも勤務中だった?

あっ!まだ結婚したい理由聞いていないのに!!

掛け直そうか悩んでいると、新着メールが一件届いた。
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