見つめないで勉強しなさい! ~一途なチャラ男くんに愛されました~
「お世話だなんて!それはこっちのセリフよぉ。大学のお勉強で忙しいのに、勉強会の先生を引き受けてくださって。ご無理をかけてごめんなさいねぇ」

「いえ。商店街の皆さんには昔からお世話になってるんで、これくらいなんともないですよ」

「本当に今回の企画には助かってるんですよぉ。うちの孫も去年まではぜんぜん勉強しないで遊び歩いてばっかりでしたけど、勉強会に行くようになってからは、毎日机に向かうようになりましたし!」

「そうなんですか?」

「ええもう。武史ったら、本当に先生のことが大好きみたいで、こっちがびっくりするくらいの変わりようなんですよ。大変でしょうけど、これからもよろしくお願いいたしますね」

「ええ、もちろんです」




近藤さんと別れて会館に向かう私の足取りは、さっきよりも弾んでいた。


今でこそ慣れたけれど、勉強会の面倒を頼まれた時は、子供の扱いになんて慣れてなかったから、正直気が重かった。

けれども、やってみるとみんないい子で私にもよく懐いてくれたし、今ではけっこう楽しいと感じていた。

それにくわえて、あんなふうに言ってもらって「商店街の役に立っているんだな」と実感すると、充実感も湧いてくる。


補講にバイトにとしんどいけど、やりがいは十分に感じていた。
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