初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
まったく世話が焼ける、と言いたげに苦笑する亜湖に、わたしも同じような苦笑を返す。
そっか、亜湖は気づいていたんだな。
でも、なにも言わずにいてくれたんだな。
今さらながら亜湖の温かい気遣いに気づいて、さっきまで大工係の男子に対してささくれ立っていた心が、すーっと凪いでいく心地がした。
そうだよね、まずは百井くんがどうしたいのかをきちんと聞かないことには、亜湖もわたしも、迂闊には動かないほうがいい。
もし変に間に入って百井くんやクラスのみんなの気持ちを害すようなことになれば、学祭にも支障が出るかもしれないし、そうしたら、きっとずっと後悔する。
それはたぶん、見方によっては孤立することよりつらい。
*
そうして気持ちを切り替え、やってきた美術室。
放課後の旧校舎は相変わらず埃っぽく、ひっそりとしていて、窓から入ってくる秋めいた太陽の光の筋が廊下のあちこちに陽だまりを作り、その中をキラキラと乱反射しながら小さな小さな埃が舞っていた。
やっぱりいいなぁ、この風景。
そう思いながら、保管している写真部の部室から持ってきた父から貸し付けられたゴツいカメラを構え、無人の廊下に向けて久しぶりに何枚かシャッターを切る。