初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
……実は、ここに来るのは、わりと久しぶりだったりする。

百井くんと微妙になりはじめてからは、なかなか足が向かわなかったのが、その理由のひとつ。

それと、その頃からコンクールや学祭の写真展に向けて本格的に写真を撮りはじめたのが、もうひとつ。

それから、百井くんの絵がそろそろ完成しそうだというのも、ここに来るのが久しぶりになってしまった理由のひとつに組み込まれている。


だって、どうせ実結先輩の絵だもの。

いくらわたしがモデルになっているといっても、所詮、首から下だけ。

それを了承したのは、もちろんわたし。

でも、百井くんのことを好きになってしまった今は、正直、完成した絵を見るのが、とてもつらい。

絵を見てどんな顔をしたらいいかもわからないし、ちゃんと感想を言えるのかどうかも自信がない。

「本当はわたしだって百井くんが好きだよ」とぽろっと告白してしまうなら、まだ可愛いほうで、やきもちのあまり嫌な態度を取ったりひどいことを言って百井くんを傷つけてしまう可能性だって十分に考えられる。


それだけは、どうしてもしたくないから。

だから、写真撮影が忙しくなりはじめたことをきっかけに、なんとなく旧校舎から足を遠ざけがちになり、いつの間にかその日数が重なってしまっていた。
 
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